今回は、共有不動産を所有しており、賃料収入(不動産所得)がある場合の所得税について解説します。
原則、所有割合に応じて共有者のそれぞれが確定申告をする
不動産を共有名義で保有している場合、その物件から生じた賃料収入や経費は、原則、共有者の持分割合に応じて案分し、不動産所得の申告をする必要があります。
つまり、各共有者が別々に所得税の確定申告を行うことになります。
例えば、自分の共有持分が1/2なら、その不動産収入や経費の1/2を自分の確定申告書で申告します。
この説明は、民法第249条、所得税法第12条及び所得税法基本通達12ー1に基づいたものです。
民法 第二百四十九条(共有物の使用)
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
出典:e-Gov法令検索
民法 第二百五十三条(共有物に関する負担)
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
出典:e-Gov法令検索
所得税法 第十二条 (実質所得者課税の原則)
資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
出典:e-Gov法令検索
所得税法基本通達12ー1(資産から生ずる収益を享受する者の判定)
法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する。
出典:国税庁
資産(不動産など)から生ずる所得は、原則としてその所有者(共有の場合には、各人の持分割合)に帰属します。
名義と実態、形式と実質とが一致しない場合
ただし、明らかにその資産(不動産など)の真実の権利者が名義者(登記上の所有者)ではない場合には「真実の権利者」に対して課税されるリスクがあります。
所得税法基本通達12ー1は、所得税法12条の解釈について、「収益を享受する者」とは「資産の真実の権利者」であり、「資産の真実の権利者」が明らかでないときは、「資産の名義人」を真実の権利者と推定するものとしています。
ですので、明らかに「資産の真実の権利者」と「資産の名義人」(登記上の所有者など)が異なっていると課税庁が判断した場合には、「単なる名義人」ではなく、「資産の真実の権利者」に課税がされる可能性があります。
所得税においては、「所得」を「税金を負担する力」と捉えており、資産の真実の権利者=収益を享受する者=所得が帰属する者であり、実際に所得が帰属する者に課税がされる必要があります。
「税金を負担する力」の無い、「単なる名義人」に対して課税するべきではないということです。
※この記事は慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも一切責任を負いません。
※この記事は、2024年5月1日現在で適用されている法令に基づき記載しております。
コメント